腸を整えるために、食物繊維の豊富な炭水化物を積極的に摂るべき 不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく

腸を整えるために、食物繊維の豊富な炭水化物を積極的に摂るべき
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく

腸の健康が損なわれると、全身の健康・美容に大きな影響を及ぼします。本稿では、「腸内環境を整えるための生活習慣や食事法」について「腸の奥からの健康を考える研究会」委員の瓜田純久教授にお話を伺いました。瓜田純久先生は、東邦大学大森病院副院長・総合診療科教授に就かれ、総合診療医として日々診療に従事されるかたわら、呼気ガス検査法により消化器領域の研究に取り組んでいます。

■食物を選べる時代の特徴的疾患「過敏性腸症候群」

近年、過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)が急増しています。過敏性腸症候群は炎症や潰瘍がないのに腹痛や便通異常をもたらす疾患で、食生活の乱れやストレスが影響していると言われています。過敏性腸症候群は食べ物を選べる裕福な社会に特徴的な疾患です。明日食べる食物を確保するのが精いっぱいの地域にはほとんどみられません。

日本においては、食べなければ飢えてしまうと言う時代ははるか昔のことで、私たちはいかに食べないで健康や良い体型を保つかに意識が向かっています。最近は糖尿病と肥満を極度に怖がってしまうような風潮があります。カロリーや栄養に関する様々な情報が溢れ、腸に必要な栄養が届いていないことも問題です。

過敏性腸症候群のもう1つの要因は腸と免疫機能の問題です。腸には様々な病原体が入ってきますが、免疫細胞が鍛えられていれば許容できる免疫寛容というのが十分に働きます。しかし、クリーンな社会になって、免疫寛容がうまく働かなくなって、本来受け入れるべき栄養素を排除してしまったり、アレルギー反応を起こしてしまったりということで、色々な腸の症状が出てきています。腸内細菌が腸の免疫機構と密接に関わっていることが最近の研究で明らかになってきました。

便秘が続く 急に下痢や腹痛におそわれる

■炭水化物の不足が腸内環境悪化を招く恐れ

食生活が変化して日本人は、白米など炭水化物を食べなくなっています。厚労省の食事摂取基準によれば、3大栄養素を炭水化物50~65%、たんぱく質13~20%、脂質20~30%のというバランスで摂取することが望ましいとされています。現代はたんぱく質が非常に多くなって、炭水化物が減っているので、腸内細菌もたんぱくの含む窒素化合物を分解できる悪玉菌が当然増えることになります。最近糖質制限をする人が増えていますが、たんぱく質や脂質の摂取が増え、食物繊維の摂取が減っており、腸内環境の悪化につながっていることに注意を払うべきでしょう。日本人は食の知識が豊富になった分、偏ったものをたくさん食べるようになってしまいました。それがかえって健康を損なうことになりかねません。

表1「エネルギー産生栄養素バランス (%エネルギー)」

目標量(中央値)(男女共通)
年齢等 たんぱく質 脂質 炭水化物
脂質
飽和脂肪酸
0~11(月)
1~17(歳) 13~20(16.5) 20~30(25) 50~65(57.5)
18~69(歳) 13~20(16.5) 20~30(25) 7以下 50~65(57.5)
70以上(歳) 13~20(16.5) 20~30(25) 7以下 50~65(57.5)

出典:「日本人の食事摂取基準2015」 (厚生労働省)

■腸内細菌の重要な役割は栄養の吸収と免疫

人間と違い動物は体重が増えません。無菌の動物の場合は、どんなにたくさん食べさせても太りません。ところが腸内細菌を植えるとブクブク太ってきます。腸内細菌が腸にすみつき共存する理由は、エネルギー、栄養面を助けるのが一番の役目です。腸内細菌との共存を選んだ人間は、自分が消化できない食物を腸内細菌に分解してもらい、体内に吸収してエネルギーとしています。腸内細菌を共存させるために免疫を寛容する、つまり相手を排除しないというシステムができたのです。

栄養面でも炭水化物を分解するのは、善玉菌も悪玉菌もできますが、肉とか窒素化合物あるいは硫黄化合物を分解できるのは、悪玉菌がほとんどだと考えられています。悪玉菌がゼロの人はいません。それは栄養面で必要だからです。腸内細菌が栄養面で助けていることが意外と知られていません。腸内細菌といえば免疫のことは良く言われますが、消化吸収を助けるのが最初に住みついた理由だと考えられます。

噛む力がなくて食べられるものが限られていると、免疫が発達しないと言われています。何でもかんでも食べるから免疫細胞が発達するということが知られています。最初は栄養面ですが、その次は腸内細菌への免疫をコントロールして共存させたのです。腸内細菌を共存させることで鍛えてもらったヒトの免疫系が実は腸以外のところにも情報を伝えていって、色々な免疫システムを作りました。腸内細菌をコントロールすれば喘息が治ったりするのは、腸が免疫システムに深く関わっているからです。

■腸内環境を整えるためには炭水化物の食物繊維を摂ることが大事

腸内細菌との共存について考えると、痩せない程度の腸内細菌がすみついているのが良いでしょう。食べたら太り、絶食をしたら痩せるというふうになっているのがちょうど良い。

腸内細菌のバランスを整えるために善玉菌を外から摂るプロバイオティクスと、善玉菌のエサとなる食物を摂るプレバイオティクスがあります。

まず、ヨーグルトなどで色々な善玉菌を入れてもすみつくことはあまり期待できません。元々すむ環境が違うというのが1つ、胃酸によって殺菌されてしまうこと、さらに常在菌と口から入れた菌が接触するのは大腸の入り口であって、奥にいる菌には接触しないことです。つまり、非常に限られた範囲の接触になるため、生着することは難しいと考えられます。

一方食物繊維ですが、便の形状を整えるためには、食物繊維だけ食べてもよくなりません。腸管というのは部屋が数珠状に繋がっていて、ある部屋に食物繊維がたくさんやってきて、そこに水が溜まってくるとビシャビシャの状態になりますが、隣の部屋は硬い便のままです。食物繊維を偏って食べている人は、硬い便が出た後に下痢便がピシャーっと出て終わってしまいます。それぞれの便が混ざってバナナ状になることはありません。便が逆戻りをしたら腸の動きがおかしくなり問題を起こします。便を整えるためには、ほどよい水を引いてくるような濃さにならなければいけません。そのためにほどよく吸収される炭水化物が必要となります。炭水化物の糖質は8割から9割吸収されますが、残りが食物繊維とある程度混ざりあって大腸まで届くことによって、ほどよいバナナ便になります。部屋ごとに濃淡がついてしまうと、硬い便や軟らかい便が交互に出てきて苦しくなってしまいます。ある程度の便量を保つためには食物繊維プラス普通の炭水化物が必要となるのです。

本研究会の研究対象であるスーパー大麦は、普通の炭水化物をしっかり含有しつつ、不溶性と水溶性両方の食物繊維を摂れます(図1参照)。腸内環境を整える優れた特徴といえます。食物繊維だけ摂れば良いという風潮がありますが、カロリーも摂らず食物繊維をたくさん食べ、あるいは炭水化物は摂らずにたんぱく質と脂肪を摂っているだけで、バナナ便など出るはずがありません。腸の免疫も当然衰えてきますし、三食食べるかどうかは別として普通に働いている人は1日の総カロリーが2000キロカロリー以上ないと痩せてきます。

食物繊維のバランスに関しては、不溶性食物繊維だけでは腸内細菌も利用しづらいので非常に濃い状態で腸に残ってしまい、硬い便の後にビシャーと下痢便が出るというパターンになりやすいのです。それぞれの部屋でほどよい濃度の状態になれないとバナナ状にはなりません。

図1:「スーパー大麦の食物繊維含有量(他の食物繊維との比較)」

「スーパー大麦の食物繊維含有量(他の食物繊維との比較)」

■腸に負担をかけない食事法

たくさん食べた時に便の量が増えれば問題ありませんが、増えない人は消化管の動きがおかしいと考えられます。逆に便の量が多すぎるのも病気の可能性があります。通常の食事を摂っている人が1日に250gを超える便量がある場合、病気の兆候といえます。食物が十分消化吸収されておらず、消化吸収を司る膵臓が悪いというサインです。粘土みたいに光っているような便は、膵臓が悪い人の特徴です。食べ過ぎた次の日に便がいっぱい出てくれれば、理に適っているということです。食べないのに出るはずがありません。

患者さんにはいつも、3食食べる必要はないとは言っています。お腹がいっぱいだったら朝を飛ばして昼と夜でも良いと言う話をします。お腹一杯なのに時間だから食べるという感覚は無くても良いと考えています。調子の良い人は朝をしっかり食べてもらって、調子の悪い時や前の日に食べすぎたり飲みすぎたという時は朝を飛ばしてもかまいません。空腹時間を8時間確保すると言う事が大事だからです。

患者さんの腸の調子をみるのにガスの量を測りますが、ガスの量が多いのは良くありません。腸からガスが多く発生するのは、菌が増えているか、あるいは腸の動きがゆっくりで菌と食べ物の接触時間が長いか、あるいは消化吸収が悪くて、たくさんの食物残渣が腸内細菌のいるところに届いてしまうかの3つです。ガスが増えるということは、何かそれが上手く行っていないということ。ただ純粋に食べ過ぎても起きてしまうので、ガスが多くなった時にはちょっと食べる量を控えると確実に減っていきます。腸の環境を整えるためには、一定の空腹時間を確保するのが大切です。

 

urita

瓜田 純久(うりた よしひさ) 先生
医学博士、東邦大学医療センター大森病院総合診療科教授

1985年、東邦大学医学部卒業。
関東労災病院消化器科勤務、地元・青森県に瓜田医院開業、東邦大学医療センター大森病院院長補佐などを経て、現職
専攻は内科学、総総合診療医学、機能性消化器疾患、内視鏡医学、超音波医学、栄養代謝など