スーパー大麦のプレバイオティクス効果

大腸の奥の細菌叢の活性化をもたらした
スーパー大麦食物繊維の多様性と独自構造

本稿では、『腸の奥からの健康を考える研究会』の委員である青江誠一郎先生(大妻女子大学家政学部学部長、教授)に、プレバイオティクスの作用をもつ水溶性食物繊維と腸内細菌叢の関わり及びスーパー大麦が優れたプレバイオティクス作用を有するその理由についてお聞きしました。

<水溶性食物繊維と腸内細菌叢の関わり>

腸内細菌叢のうち善玉菌は、ヒトが消化吸収できない水溶性食物繊維をエサとして発酵分解して、人間の身体にとって有用な代謝産物(短鎖脂肪酸など)を産生します。主な短鎖脂肪酸は、酢酸、酪酸、プロピオン酸の3種類です。
短鎖脂肪酸には下記のように様々な役割が知られています。腸内環境を整えることは、大腸だけでなく、全身の健康のためにも重要なことなのです。

1.大腸内での働き
短鎖脂肪酸は酸性の成分のため、短鎖脂肪酸が産生すると弱酸性の腸内環境になり、 悪玉菌の生育が抑えられ、善玉菌が優位になる。
悪玉菌が抑えられるため、毒素や腐敗産物ができにくくなり、腸内環境が改善する。

2.全身での働き
肥満、糖尿病、脂質異常症を予防・改善する手段として活発に研究されている

<善玉菌は、それぞれ好みの食物繊維が違う>

プレバイオティクスの代表的食品成分として、水溶性食物繊維やオリゴ糖、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)があげられます。私たちが日常の食品から摂取できる主な水溶性食物繊維は5種類ありますが、善玉菌はその種類によって活用できる食物繊維が違います。細菌が活用できる食物繊維があれば活性化し数を増やすことができますが、好みの食物繊維がないと、数を増やすことができません。

<多種多様な水溶性食物繊維が、多様な細菌叢を支える>

多くの種類の水溶性食物繊維を取り入れれば、様々な善玉菌がその勢力を増やすことができるため、多様な細菌が共存する腸内細菌叢を育てることができるのです。多様性のある腸内細菌叢を持つのが、健康な腸内環境といえます。
例えば最近の研究で、トップアスリートの腸内細菌叢を調べたところ、普通の選手に比べて多様な細菌叢を持っていることがわかりました。この研究結果を受け、スポーツに関わる一部の機関では腸内細菌の多様性を意識した食事を提供しているケースが出始めました。スポーツ選手の腸内細菌叢が多様なメリットとしては、海外遠征によって食事が変わった場合の菌叢の減少によるダメージを防ぐためなどもあげられます。腸内細菌の種類が少なければ、半減すると大きなダメージにつながりますが、多様な腸内細菌叢を持っていれば、仮に減少してもダメージは少なくてすむのです。

<食物繊維は、発酵速度の違いにより、届く部位に差がでる>

水溶性食物繊維と不溶性でありながら腸内細菌が利用できるレジスタントスターチとは、発酵速度が異なります。
まず、分子量が小さなものが、早く腸内細菌に食べられるので、発酵速度が早くなります。逆に分子量が大きいほど、利用されるまでに時間がかかるため、発酵速度が遅くなる傾向にあります。
また、水溶性か不溶性かでも発酵速度が変わります。水溶性の方が早く利用され、レジスタントスターチなど不溶性でありながら腸内細菌がエサとして利用できる食物繊維は、遅い傾向にあります。

<大腸の奥まで届く・スーパー大麦は多様な水溶性食物繊維の宝庫>

水溶性食物繊維は多くの食物繊維含有食品に含まれていますが、いずれも含量が少ないです。100gあたりの水溶性食物繊維量で1g以上含んでいるのは、大麦押麦:6.0g(総量9.6g)、ごぼう生:2.3g(総量5.7g)、海藻など(生わかめ:食物繊維総量6.1g※水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の分別定量が困難な食品では総量のみの表示)です注2)

スーパー大麦は、一般の大麦に比べ総食物繊維量は2倍、食物繊維の一種といわれるレジスタントスターチは4倍含んでいます。プレバイオティクス効果をもたらす主な食物繊維6種のうち4種を含みます。スーパー大麦は食物繊維の宝庫といえます。スーパー大麦を主食に据えれば、多様な食物繊維を手軽に摂取することができるのです。
スーパー大麦の構造は、不溶性食物繊維(セルロース、アラビノキシランの一部)と水溶性食物繊維(大麦β-グルカン、アラビノキシラン)によって構成される細胞壁の中に、レジスタントスターチと水溶性食物繊維(大麦β-グルカン、アラビノキシラン)が絡み合った状態で存在している複雑な構造です。このような構造のため、発酵速度が比較的ゆっくりであり、少量でも効率的に大腸の奥まで届くことができるのです。
そのため、大腸の奥の細菌叢の活性化にも役立つと考えられています。

スーパー大麦と他の穀物との食物繊維量比較

成分 スーパー大麦
(日本食品分析センター)
大麦/押し麦
(日本食品分析センター)
もち麦
(日本食品分析センター)
白米
総食物繊維(%) 21.6 9.6 12.9 0.5

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■スーパー大麦とは
スーパー大麦は、豪州の食品・栄養研究機関であるオーストラリア連邦科学産業研究機構(本部:豪州キャンベラ)が開発した非遺伝子組み換え大麦のスーパーフードです。
豪州ではがんや生活習慣病の患者が増え、社会問題化していました。これらの疾患は食習慣を改めれば予防や改善が期待できます。手軽で継続的に取り組める解決法のひとつとして、健康効果の高い大麦が注目されていました。オーストラリア連邦科学産業研究機構は長い間、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)や食物繊維を豊富に含む大麦を探していて、あるとき後のスーパー大麦となる大麦の品種「Himalaya種」を発見します。1998年から「Himalaya種」の改良に取り組み、10年以上の年月をかけ開発されたのが、レジスタントスターチと多様な水溶性食物繊維を含み、優れたプレバイオティクス効果をもつスーパー大麦(Himalaya292)です。


注1)プレバイオティクスは、胃・小腸で分解・吸収されずに、大腸にすむ有益な細菌の栄養源となり、腸内細菌叢を健全なバランスに改善、健康保持に役立つ食品成分を指す。1995年英国の学者Gibson博士が提唱。
注2)出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

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青江 誠一郎(あおえ せいいちろう) 農学博士、大妻女子大学 家政学部部長 教授

千葉大学大学院園芸学研究科農芸化学専攻・修士課程修了。
2003年 大妻女子大学家政学部助教授、2007年より同大学家政学部教授。2016年より同大学家政学部学部長。2007年日本栄養改善学会・学会賞受賞、2008年日本酪農科学会・学会賞受賞、2010年日本食物繊維学会・学会賞受賞。

『腸の奥からの健康を考える研究会』概要

『腸の奥からの健康を考える研究会』は、スーパー大麦の摂取による腸内環境や美肌への影響など、腸内の健康や美容に関する研究を行い、生活者にとって有益な情報創出を目指していきます。