スーパー大麦「バーリーマックス」摂取による抗肥満効果試験

<スーパー大麦「バーリーマックス」摂取による抗肥満効果試験>
―ランダム化二重盲検並行群間比較試験―

バーリーマックスを1日12g摂取で、腹部内臓脂肪面積(VFA)の有意な減少を確認。
短鎖脂肪酸を産生する有用腸内細菌ブラウティア属、プレボテラ属、フィーカリバクテリウム属が増加

『腸の奥からの健康を考える研究会』(座長:帝京平成大学健康メディカル学部教授 松井輝明)の研究活動の一環として、松井輝明教授、岡山大学大学院 環境生命科学研究科森田英利教授、帝人株式会社とで、スーパー大麦「バーリーマックス(BAREYmax)」摂取による抗肥満効果についての評価試験を行いました。

本試験は、肥満傾向の成人男女(男性24名、女性26名)を対象とし、ランダム化二重盲検並行群間比較法にて実施しました。バーリーマックス摂取群の対象者は、バーリーマックス含有食品(グラノーラ形体で、バーリーマックスの摂取量として12 g/dayに設計)を12週間摂取しました。対照食品としてプラセボ群には、バーリーマックスの代わりに、外観が類似になるようにコーンフレークを含むものを使用しました。
試験の結果、バーリーマックス摂取群では、内臓脂肪面積(VFA)の有意な減少が認められたのに対し、対照食品を摂取した群は、内臓脂肪面積の有意な減少は認められませんでした。また、バーリーマックス摂取により身体に有用な腸内細菌と考えられているブラウティア(Blautia)属、プレボテラ(Prevotella)属、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属の増加が認められました。本試験結果より、バーリーマックスの摂取によって、腹部内臓脂肪型肥満と腸内細菌叢改善の可能性が示唆されました。

内臓脂肪型肥満と食物繊維摂取の関連性について、食物繊維の摂取量と内臓脂肪の蓄積量、経時的な内臓脂肪の変化量は負の相関を示すことが報告されており1, 2)、特に、水溶性食物繊維の影響が大きいことが指摘されています3)。また水溶性食物繊維の摂取が内臓脂肪の蓄積を抑制するメカニズムについて、近年、腸内細菌が関与することが明らかになってきています4)。一部の腸内細菌は、水溶性食物繊維を代謝して酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を産生します。それが全身に存在する短鎖脂肪酸受容体への結合を介して糖新生を活性化し、内臓脂肪の蓄積を抑制したり、溜まっている内臓脂肪の燃焼を促進することが示唆されています。
バーリーマックスは、オーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO)が10年かけて品種改良を行った機能性大麦です。大麦に含有されるβ-グルカンに加え、水溶性食物繊維フルクタン、水溶性食物繊維と同様に、腸内細菌によって短鎖脂肪酸に代謝されるレジスタントスターチ5)が豊富に含まれています6)。豪州で実施された臨床試験では、バーリーマックスが、食後血糖値上昇の抑制7)、便通の改善8)の機能をもつことが報告されています。また、便通の改善を報告した試験において、便中の短鎖脂肪酸量の増加8)が報告されています。
以下に、本試験で確認されたバーリーマックスの抗肥満効果について記します。

1. 腹部内臓脂肪面積(VFA)が減少

バーリーマックス摂取群では、腹部内臓脂肪面積(VFA)の値が有意に減少しましたが、プラセボ群では、有意な変化は認められませんでした(バーリーマックス摂取群:-7.3c㎡、プラセボ群:-5.3c㎡)。また、試験後および試験前からの変化量(以下、変化量)における、バーリーマックス摂取群とプラセボ群との間に、有意な差は認められなかったが、バーリーマックス摂取群の2週間後のVFAの減少量は、プラセボ群よりも大きいことが確認されました。この結果から、バーリーマックスは、VFAの減少の効能をもつことが示唆されました。

図1 腹部内臓脂肪面積の変化

2. 高分子アディポネクチンに関わる指標HMW比が有意に増加していることから、メタボリックシンドロームの予防・改善の可能性を示唆

アディポネクチンは脂肪燃焼や糖の取り込みの促進作用をもつホルモン様の物質です。血中では高分子量、中分子量、低分子量のものが併存する多量体としてはたらいています。総アディポネクチンに対する高分子アディポネクチンの比率をHMW比と呼びますが、HMW比は、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームの基準と負の相関を示し9, 10)、2型糖尿病の発症の予測に有効であることが示唆されています11)。さらに、アディポネクチンが多量体を形成できない変異をもつヒトは、糖尿病のリスクが増大することが報告されています12,13)
本試験ではバーリーマックス摂取群、プラセボ群のいずれも、HMW比の有意な増加が認められましたが、試験後におけるバーリーマックス摂取群のHMW比の値が、プラセボ群よりも有意に高い値を示しました。本研究においても、試験前の被験者全体のHMW比について、HbA1cと中性脂肪が負の相関を示し、HDL-Cが正の相関を示したことから(HbA1c:p = 0.004、中性脂肪:p = 0.027、HDL-C:p = 0.003、結果記載なし)、HMW比は、メタボリックシンドロームと大きく関係していることが示唆されました。これらの点から、バーリーマックスの摂取は、内臓脂肪型肥満を改善することによって、メタボリックシンドロームの予防・改善につながる可能性が期待されます。

図2 HMW比の変化

3. 夕食のエネルギー摂取量の影響を受けず、内臓脂肪型肥満を改善する可能性を示唆

夕食に摂取するエネルギー量と腹部脂肪面積(VFA)量の相関を検証したところ、プラセボ群においてのみ、夕食エネルギー比率(1日の摂取エネルギーのうち、夕食で摂取しているエネルギーの比率)の試験前の値が、VFA変化量と正の相関を示し、夕食エネルギー比率の変化量が、VFA変化量と負の相関を示しました。
食事介入の臨床試験において、夕食のエネルギー摂取量を少なくすると、腹囲が減少すること、また、血糖値が低下することが知られています。プラセボ群では、摂取前の夕食エネルギー比率が大きいほど、VFAがほとんど変化しない、もしくは増加する傾向がみられたのに対し、バーリーマックス摂取群は、試験前の夕食エネルギー比率とVFA変化量の相関は認められませんでした。これらのことから、バーリーマックスは、夕食のエネルギー摂取量の影響を受けず、内臓脂肪型肥満を改善する可能性があると考えられます。

図3-1 バーリーマックス摂取時のVFA変化量と
夕食エネルギー比率との関係

図3-2 プラセボ食品摂取時のVFA変化量と
夕食エネルギー比率との関係

4. 有用な腸内細菌ブラウティア属、プレボテラ属、フィーカリバクテリウム属が増加

バーリーマックス摂取による腸内細菌叢の変化について属レベルで見ると、図4のように、体に有用な腸内細菌と考えられているブラウティア(Blautia)属、プレボテラ(Prevotella)属、フィ―カリバクテリウム(Faecalibacterium)属を増やす傾向にあり、バーリーマックス摂取の有効性が示唆されました。
特にブラウティア(Blautia)属は酢酸をつくり、ヒト腸内細菌叢における最優勢な属のひとつで、高齢者や糖尿病、肝硬変、大腸がん、乳がんなどをはじめ種々の疾患の患者の腸内細菌叢で減少していることなどからもブラウティア(Blautia)属は健康に有用な属の一つと考えられています14-16)。またプレボテラ(Prevotella)属も酢酸をつくり、属レベルでは、穀類を多く摂取するアフリカ・南米タイプのエンテロタイプに主要な(鍵となる)細菌と考えられています14)。フィ―カリバクテリウム(Faecalibacterium)属は酪酸を産生し、すなわち、フィ―カリバクテリウム プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)が減少することが腸内細菌叢の多様性やバランスが損なわれた“ディスバイオシス(dysbiosis)”の主要な原因となることが多く報告されており、腸内細菌の中でも特に注目されている細菌です17-19)

図4 腸内細菌叢の変化

文献

1) Romaguera D, Angquist L, Du H, Jakobsen MU, Forouhi NG, Halkjaer J, et al. Dietary determinants of changes in waist circumference adjusted for body mass index – a proxy measure of visceral adiposity. PLoS One. 2010; 5: e11588.

2) Parikh S, Pollock NK, Bhagatwala J, Guo DH, Gutin B, Zhu H, et al. Adolescent fiber consumption is associated with visceral fat and inflammatory markers. J Clin Endocrinol Metab. 2012; 97: E1451-7.

3) Hairston KG, Vitolins MZ, Norris JM, Anderson AM, Hanley AJ, Wagenknecht LE. Lifestyle factors and 5-year abdominal fat accumulation in a minority cohort: the IRAS Family Study. Obesity (Silver Spring). 2012; 20: 421-7.

4) De Vadder F, Kovatcheva-Datchary P, Goncalves D, Vinera J, Zitoun C, Duchampt A, et al. Microbiota-generated metabolites promote metabolic benefits via gut-brain neural circuits. Cell. 2014; 156: 84-96.3) Romaguera D, Angquist L, Du H, Jakobsen MU, Forouhi NG, Halkjaer J, et al. Dietary determinants of changes in waist circumference adjusted for body mass index – a proxy measure of visceral adiposity. PLoS One. 2010; 5: e11588.

5) Sajilata MG, Singhal RS & Kulkarni PR. Resistant Starch–A Review. Compr Rev Food Sci Food Saf. 2006; 5: 1–17.

6) Clarke B, Liang R, Morell MK, Bird AR, Jenkins CL, Li Z. Gene expression in a starch synthase IIa mutant of barley: changes in the level of gene transcription and grain composition. Funct Integr Genomics. 2008; 8: 211-21.

7) King RA, Noakes M, Bird AR, M.K. Morell, Topping DL. An extruded breakfast cereal made from a high amylose barley cultivar has a low glycemic index and lower plasma insulin response than one made from a standard barley. J Cereal Sci. 2008; 48: 526–530.

8) Bird AR, Vuaran MS, King RA, Noakes M, Keogh J, Morell MK, et al. Wholegrain foods made from a novel high-amylose barley variety (Himalaya 292) improve indices of bowel health in human subjects. Br J Nutr. 2008; 99: 1032-40.

9) Pajvani UB, Hawkins M, Combs TP, Rajala MW, Doebber T, Berger JP, et al. Complex distribution, not absolute amount of adiponectin, correlates with thiazolidinedione-mediated improvement in insulin sensitivity. J Biol Chem. 2004; 279: 12152-62.

10)Hara K, Horikoshi M, Yamauchi T, Yago H, Miyazaki O, Ebinuma H, et al. Measurement of the high-molecular weight form of adiponectin in plasma is useful for the prediction of insulin resistance and metabolic syndrome. Diabetes Care. 2006; 29: 1357-62.

11)Satoh H, Fujii S, Tsutsui H. The high-molecular weight (HMW) form of adiponectin is a significant surrogate marker for the prediction of type 2 diabetes mellitus in the Japanese population. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2010; 20: e9-10.

12)Vasseur F, Helbecque N, Dina C, Lobbens S, Delannoy V, Gaget S, et al. Single-nucleotide polymorphism haplotypes in the both proximal promoter and exon 3 of the APM1 gene modulate adipocyte-secreted adiponectin hormone levels and contribute to the genetic risk for type 2 diabetes in French Caucasians. Hum Mol Genet. 2002; 11: 2607-14.

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15)Chen W, Liu F, Ling Z, Tong X, Xiang C. Human intestinal lumen and mucosa-associated microbiota in patients with colorectal cancer. PLoS One. 2012; 7: e39743.

16)Inoue R, Ohue-Kitano R, Tsukahara T, Tanaka M, Masuda S, Inoue T, et al. Prediction of functional profiles of gut microbiota from 16S rRNA metagenomic data provides a more robust evaluation of gut dysbiosis occurring in Japanese type 2 diabetic patients. J Clin Biochem Nutr. 2017; 61: 217-221.

17)Duncan SH, Hold GL, Harmsen HJ, Stewart CS, Flint HJ. Growth requirements and fermentation products of Fusobacterium prausnitzii, and a proposal to reclassify it as Faecalibacterium prausnitzii gen. nov., comb. nov. Int J Syst Evol Microbiol. 2002; 52: 2141-2146.

18)Song H, Yoo Y, Hwang J, Na YC, Kim HS. Faecalibacterium prausnitzii subspecies-level dysbiosis in the human gut microbiome underlying atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol. 2016; 137: 852-860.

19)Quévrain E, Maubert MA, Michon C, Chain F, Marquant R, Tailhades J, et al. Identification of an anti-inflammatory protein from Faecalibacterium prausnitzii, a commensal bacterium deficient in Crohn’s disease. Gut. 2016; 65: 415-425.

本原稿は、薬理と治療に掲載された以下の論文をもとに、まとめました。
野村 直生、西村 文、三好 孝則、北薗 英一、森田 英利、松井 輝明
機能性大麦BARLEYmax (Tantangara)の腸内細菌叢を介する抗肥満効果
薬理と治療 2018,46(12):2099-2110
受理日(2018‒10‒22),採択日(2018‒11‒27)

『腸の奥からの健康を考える研究会』概要

『腸の奥からの健康を考える研究会』は、食物繊維による腸内環境改善、特に大腸の奥の改善からもたらされる様々な健康効果、肌荒れ・肌の張り・ニキビ等の美容効果に対するメカニズムの研究を行い、そのエビデンスをベースに、本質的な健康についての啓発を行うことを目的として発足。
スーパー大麦「バーリーマックス」を中心とする食物繊維のメカニズムの研究及び、学会・論文発表を行っています。また生活者に腸内環境を整えることによる健康保持についての啓発を行っています。